子宮鏡
子宮鏡とは
子宮鏡とは、子宮用の細い内視鏡(子宮鏡)を子宮の入り口から挿入し、子宮の内部をモニターで観察します。
そのモニターを見ながら、子宮筋腫や子宮内膜にできたポリープなどを子宮鏡の先端にある電気メスを操作し切開・切除する手術を子宮鏡手術といいます。
膣から内視鏡を挿入しますので、見えるところに傷はできません。体への負担が少ない手術です。
子宮鏡手術を行う病気
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子宮の内腔の病気が治療の対象となります。
1.子宮内膜ポリープ
ただし子宮の筋肉にくいこんでいる部分がとても大きい方は、子宮穿孔の危険がありますので出来ません。症状としては、不正出血や過多月経をおこすことが多いです。ご自分では気づかなくても健康診断で貧血を指摘され、診断されるケースも少なくありません。また、不妊症の原因にもなります。 |
受診から手術、退院後まで
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外来診察にて子宮の内腔に病気が疑われた場合、外来にて子宮鏡の検査(予約制)をしていただきます。
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手術日程を相談します。手術前に薬を使用する場合もあります。
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手術前検査を受けていただき、後日、検査結果説明と入院手続きをします。
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入院・手術(入院期間は2~4日です)
退院後は痛みや出血に応じて通常の生活に戻してください。
手術後に薬を使用する場合もあります。詳細は担当医または病棟スタッフに相談してください。 -
退院後、2週間前後で外来受診していただきます。
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実際の写真
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子宮鏡のメリット・デメリット
メリット
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見えるところに傷がなく、術後の痛みが少ないです。
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モニターで観察しながら行いますので、安全で的確な病巣部の切除が可能です。
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入院も短く、日常生活への復帰も早いです。
デメリット
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子宮鏡は視野が限られているため、どうしても摘出可能な腫瘍の大きさに限界があります。
そのような時には一度手術を終了し、二回に分けて摘出することもあります。 -
子宮に穴が開いてしまう子宮穿孔というリスクがあり、約100回に一度ぐらいの頻度で発生します。
超音波などでモニターしながら切除を進めていきますが、子宮の壁がうすくなると予期せぬ穿孔がおこることがあります。このような場合は、腹腔鏡手術、あるいは開腹手術に切り替えて、穴をふさぐ場合もあります。 -
手術の合併症で水中毒というものがあります。
800回に1回程度の頻度でおこります。
これは、手術時間が長くなると、子宮の内部に注入した液体によって血液が薄くなる現象です。
手術時間が長引いてしまい、手術が完遂できない時には後日再び子宮鏡手術を行う場合があります。
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子宮体がん
子宮体がんとは
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子宮がんは「子宮頸がん」と「子宮体がん」に分けられます。 子宮体がんは次第に子宮の筋肉に浸潤します。さらに子宮頸部(子宮の入口)や卵管・卵巣に及んだり、骨盤内や大動脈周囲のリンパ節に転移したりします。さらに進行すると、腹膜・腸・肺・肝臓・骨などに転移します。子宮体がんは閉経前後の40歳代後半から50歳代前半に発症しやすいといわれていますが、近年、子宮体がんは年齢に関係なく増加傾向にあります。 閉経年齢が遅い、出産歴がない、肥満などが子宮体がんの危険因子です。また、糖尿病、高血圧、乳がん・大腸がんの家族歴との関連が指摘されています。 子宮体がんでは、比較的初期のうちから不正出血が起こります。月経不順との鑑別に注意が必要です。不正出血を認めたら、一度婦人科を受診しましょう。 |
治療法
子宮体がんの手術は、進行期(ステージ)により子宮と付属器(卵巣と卵管)を摘出する手術、さらに骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節も切除する手術があります。
開腹手術の場合、リンパ節切除を行うと下腹部からみぞおちに達するまでの大変大きな切開が必要となります。大きな切開は術後の痛み、回復の遅れ、癒着による腸閉塞のリスクを伴います。
従来の開腹手術が腹腔鏡下手術になることで、手術の傷は0.5~1㎝程度の傷が4~5ヶ所程度と非常に小さくなり(下図)、それに応じて術後の痛みは非常に少なく、回復は早くなります。出血量は少なく、腸閉塞など術後の合併症も減少します。結果的に入院期間が短くなり、社会復帰も早くなります。
また腹腔鏡は腹腔内を観察しやすく、映像を拡大して手術できるため、開腹手術と比較しても同等あるいはそれ以上の精度で手術が行えます。手術時間は同程度です。
「腹腔鏡下子宮体がん根治手術」は、2008年7月に先進医療に承認され、2014年4月からは保険診療で可能になりました。通常、推定進行期1b期までの方が手術適応となりますが、原則として子宮が腟から取り出せる事が条件となります。適応症例を選択することが非常に重要ですので手術希望の場合は担当医とご相談ください。
この手術では、以下のような傷になります。
開腹手術 |
腹腔鏡下子宮体がん根治術 |
実際の写真
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卵巣腫瘍
※チョコレートのう腫は子宮内膜症をご覧ください。
症状・疫学
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卵巣は子宮と骨盤に靭帯(ひものようなもの)でぶら下がっている、子宮の左右にある2~3cm大の、卵を持った、女性ホルモンを放出している臓器です。 その卵巣にこぶができた状態が卵巣腫瘍です。良性、境界悪性(中間型)、悪性腫瘍に分類され、その種類は多彩です。 |
1.漿液性嚢胞腺腫
さらさらの液体が溜まった腫瘍で全卵巣腫瘍の15~25%を占めます。
2.粘液性嚢胞腺腫
粘液が溜まった腫瘍で全卵巣腫瘍の5~30%を占めます。30㎝を超える大きさに成長することもあります。
3.成熟嚢胞性奇形腫 (皮様嚢腫)
脂肪、髪の毛、歯などが溜まった腫瘍で全卵巣腫瘍の15~25%を占めます。あらゆる年代に見られますが20-40代に多く見られ、妊娠をきっかけに見つかることも少なくありません。
その診断には超音波検査、MRI・CT画像検査や腫瘍マーカー検査などを行い判断していきます。
しかし診断精度には限界があるため、手術にて腫瘍を取り除き病理検査を行うことが必要となります。(*腫瘍マーカー:腫瘍細胞が存在することで作られる物質で、がんの診断の補助などに使用しますが、良性腫瘍でも上昇することがあります。)
自覚症状としては腹部膨満感(お腹の張り)、下腹部痛、頻尿などがありますが、症状がない方も多くいます。
中には赤ちゃんの頭くらいの大きさになっても腫瘍の成長速度がゆっくりなことが多いため太ってきたと思う方も少なくありません。
ただ腫瘍が捻じれる=卵巣腫瘍茎捻転や破裂を起こした場合には急激な下腹部痛が起こります。
治療法
薬などでは小さくすることできないため、手術が基本となります。
当院で行っている卵巣腫瘍に対する腹腔鏡下手術では、下記のような手術創になります。
腫瘍の大きさ、種類、手術したことがあるか、などふまえて決めていきます。
腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術
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腫瘍のみを摘出し正常部分を温存します。
妊娠を希望する方や閉経前の方に対して行います。
腹腔鏡下付属器切除術
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付属器(卵巣・卵管)ごと摘出します。
閉経後の方や腫瘍と正常部分が分けられないような場合に行います。
どちらを選択するかは、検査結果と患者様の希望をふまえて決めていきます。 ただし悪性腫瘍の疑いがある場合には、積極的には腹腔鏡下手術は行っていません。 |
この手術では、以下のような傷になります。
単孔式手術後に臍が変形してしまうことがあるとされる手術法ですが、この変形を極力抑える当院オリジナルの切開法です。 |
多孔式 (パラレル法)当院では可能な限り体へのダメージを減らすために3箇所の穴(3孔式)で行っています。(通常他院では4孔式です) |
実際の写真
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子宮筋腫
疫学・原因
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子宮筋腫は良性の腫瘍で、30歳以上の女性の20~30%、ごく小さなものを含めると約75%にみられるとされています。女性の中で最も高頻度におこる疾患です。 卵巣からのホルモンによって発育するので、初経前にみられることはなく、月経期に増大し、閉経後には一般的に縮小します。 筋腫ができた場所により、漿膜下筋腫・筋層内筋腫・粘膜下筋腫と分類されます。約半数は無症状ですが、代表的な症状としては、月経が長くなったり、出血量が多くなり重症貧血となることもあります。また、不正出血が起きたり、月経時に強い痛みがあるだけでなく、慢性的な腰痛の原因ともなります。さらに、頻尿や便秘症状が起きたり、不妊の原因になることもあります。 |
治療・手術
子宮筋腫の手術は、根本的な治療法は子宮そのものを摘出する「子宮全摘術」となります。
一方で、妊娠を可能にするため筋腫のみを取り除く「筋腫核出術」があります。
どちらも開腹手術・腹腔鏡手術を行いますが、当院では腹腔鏡手術を多くあつかっています。
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子宮そのものは温存して、子宮筋腫のみを取り除く術式です。最大のメリットは子宮が残るため妊娠が可能である、という反面、デメリットは残念ながら再発する可能性が高いという欠点があります。開腹手術での筋腫核出術は術後の癒着が必発といわれており、本来は妊娠しやすくなるための手術がこの癒着でかえって妊娠しづらい状態になることもあります。そのため、術後の癒着が少ないとされる腹腔鏡手術はこの点からみてもメリットがあります。当院では、筋腫がいくつあったとしても子宮温存を希望されれば、子宮全摘術とはせずに可能な限り筋腫核出術を行います。
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この手術では、以下のような傷になります。
単孔式手術後に臍が変形してしまうことがあるとされる手術法ですが、この変形を極力抑える当院オリジナルの切開法です。 |
多孔式 (パラレル法)当院では可能な限り体へのダメージを減らすために3箇所の穴(3孔式)で行っています。(通常他院では4孔式です) |
実際の写真
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子宮そのものを摘出するため、メリットは子宮筋腫が再発しないだけでなく将来にわたって子宮がんになることもありませんが、その一方でデメリットは妊娠することができなくなりますので妊娠を考えておられる方には適しません。多くの方が疑問に思っておられることとして「子宮全摘をすると更年期障害となるのでは?」という質問がありますが、子宮からは女性ホルモンを分泌していないために「子宮全摘術」を行っても更年期障害となることはありません。女性ホルモンは卵巣から分泌していますので、この卵巣を温存することで更年期障害から避けることができます。ですので、閉経されてない方は卵巣を残すことで普段通りの生活を送ることができます。当院では、他院で開腹手術と言われるようなお臍を超える大きな子宮筋腫でも可能な限り腹腔鏡手術で行っています。
この手術では、以下のような傷になります。
SSL法手術後に臍が変形してしまうことがあるとされる手術法ですが、この変形を極力抑える当院オリジナルの切開法です。 |
多孔式 (ダイアモンド変法)当院では可能な限り体へのダメージを減らすために3箇所の穴(3孔式)で行っています。(通常他院では4孔式です) |
実際の写真
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子宮内膜症
症状・疫学
子宮内膜症は子宮内腔にあるべき子宮内膜が子宮以外の場所で発育したものを指し、月経がある限り進行する病気です。
しかし女性の10人に1人がかかるといわれ増加傾向にあります。
原因ははっきりと解明されていませんが、月経血が卵管を通ってお腹の中に逆流し生着してしまう子宮内膜移植説や、お腹の内側の膜(=腹膜)が何らかの理由で子宮内膜に変化し子宮内膜症になる体腔上皮化生説などが言われています。
病変は次のように分けられます。
1.腹膜病変
腹膜や臓器の表面に発生し病変はミリメートル規模でバラバラと散らばっており癒着の原因になるものです。
画像検査では診断できず、実際にお腹の中をみることで診断できます。
子宮・卵巣・腸管が癒着し骨盤内が一塊となってしまうこともあり、凍結骨盤(frozen pelvis)と呼ばれます。
2.卵巣子宮内膜症 (卵巣チョコレート嚢胞)
卵巣内に発生しチョコレート様の古い血液が溜まります。良性卵巣腫瘍ですが0.7%程度に卵巣がんが発生するとされています。
腫瘍が10㎝以上、小さくても年齢40歳以上、腫瘍内に充実部(こぶ)があるような場合には注意が必要となっています。
3.深部子宮内膜症 (ダグラス窩・深在性子宮内膜症)
お腹の中で一番底辺になるくぼみをダグラス窩といい、ここの腹膜より潜り込んだ場所にできるものです。
4.他臓器子宮内膜症
肺、膀胱、尿管、腸管といった体のどの部分でも発生します。症状は部位によって様々ですが、月経時に症状が現れます。
厳密には子宮内膜症とは区別されますが、子宮筋層内に病変ができ子宮が全体的に大きくなってしまう子宮腺筋症というものもあります。
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その診断にて内診、超音波検査、MRI画像検査、腫瘍マーカーなどが用いられますが、手術しないと診断できない場合もあります。 自覚症状として徐々に悪化する月経痛、下腹部痛、腰痛、慢性骨盤痛、排便痛、性交痛、不妊などが挙げられます。原因不明の不妊症の50%に子宮内膜症があると言われています。子宮腺筋症があると月経量が多くなることがあります。 |
治療法
治療は薬物療法と手術療法に分けられます。
手術療法薬での効果が得られない場合、不妊の場合、年齢、腫瘍の大きさによって選択されます。
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手術の種類
卵巣腫瘍摘出術
チョコレート嚢腫に対し腫瘍のみを摘出し正常部分を温存する手術です。
妊娠を希望する方や閉経前の方に対して行います。
しかし卵の数が減ったり卵巣機能が低下することがあると指摘されています。
そのようなことを避けるために手術操作を工夫しています。
付属器切除術
付属器(卵巣・卵管)ごと摘出するが行われます。閉経後の方や感染を伴うような場合に行います。
子宮内膜症病巣除去術
病変をレーザーなどで焼いたり、切り取っていきます。
癒着剥離術
癒着を剥がし、元の状態に戻します。
子宮腺筋症病巣除去術
子宮腺筋症の部分のみを摘出する手術です。
状態によっては可能な場合があります。外来にてご相談ください。
ただし悪性腫瘍の疑いがある場合には、積極的には腹腔鏡下手術は行っていません。
腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術のイメージ
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腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術では、以下のような傷になります。
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多孔式パラレル法当院では可能な限り体へのダメージを減らすために3箇所の穴(3孔式)で行っています。(通常他院では4孔式です) |
実際の写真
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送信が完了しました。
ありがとうございます。
お送りいただいた内容確認し、後ほど返信させていただきます。
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昨今の産婦人科医の減少という背景から総合病院の産婦人科閉鎖やクリニック閉院など産婦人科医療の不足が指摘されている中、当院の産婦人科では地域における産科医療と婦人科医療の充足のみならず、侵襲の少ない腹腔鏡手術にも力を注いでまいりました。
腹腔鏡手術は傷が小さく目立たないことから女性の病気を治療する婦人科の手術では多くのニーズがあります。 また、術後の回復が早いことから入院の期間が短く済み、早期に手術前の生活に戻れることも忙しい女性にとって大きな利点となります。このようなことから従来開腹で行われてきた手術が、低侵襲で繊細な操作が可能な腹腔鏡手術に急速に移行してきており、婦人科手術の中心的方法として広まりつつあります。 |
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絶対的な判断基準にはなりませんが、1つの指標として日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医制度というものがあります。技術認定医が複数在籍する施設は大学病院を除けば全国でもまだまだ数少ない状況ですが、当院の産婦人科では4人の常勤医が技術認定医として在籍し、加えて4人の技術認定医が非常勤医師として勤務しています。そのため、非常に高いレベルの手術を安全に行うことができるようになりました。勤務している医師がほぼ技術認定医であるというのは全国でもまだ類をみません。そのため、他院では開腹手術でなければ無理と言われるような巨大な子宮筋腫でも、当院では腹腔鏡手術でご案内し安全に施術しております。
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当院の産婦人科では、子宮鏡手術はもちろんのこと、卵巣腫瘍、子宮内膜症などの病気や他院での治療は困難と判断されるようなお臍を超える巨大な子宮筋腫でも腹腔鏡手術で治療をおこない、また、骨盤リンパ節郭清や傍大動脈リンパ節郭清を含めた腹腔鏡下子宮体がん根治術も積極的に手がけてまいりました。全国的に見ても手術の質は高いものであると自負しておりますし、そして実際にこれまで多数の実績を残してまいりました。現在は、その手術技術を伝えるべく他院の医師へ手術指導もしております。
今後は今まで以上に、より積極的に腹腔鏡手術に取り組んでいけるよう、また、多くの患者の皆さまに満足のいく治療を受けていただけるよう、婦人科内視鏡手術センターを開設いたしました。
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いつでも気軽にご相談にお越しください。
